挙手によらない授業をつくる
前号「挙手による発表はいらない」の続きである。
年度の一番初めから、挙手によらない授業の進め方を始めてしまう。
<朝の健康観察>
朝の会のコンテンツでも述べた。(参照「朝の会は基本的に不要」)
教師が指名して、子どもが「元気です。」と答えるパターンをやめる。
子どもが自ら、「〇〇(自分のフルネーム)です。元気です。」と順に言う。はじめは列順でいい。やがて、出席番号順にする。
これは、前の発言者が言い終わってから、自分が言い始めるという練習にもなる。やがて指名なし発表や、指名なし討論への布石にもなる。
<ミニ発表会>
同じように発言する練習として、ミニ発表会の場を作る。
教師がお題を決めて、子どもたちが順に発表する。
「りんご、みかん、バナナのうち、好きな果物を発表してください。」
と指示を出し、列順で発表させる。
コツは、二つある。
一つは、前の人が言い切ってから、起立して言い始める。
このタイミングを早すぎず、遅すぎず設定できるようになると、後々の授業の進行にも大きく生きてくる。
二つ目には、完全に起立してから言い始め、言い切ってから腰掛ける。
細かいようだが、立ちながら、座りながら発言すると声が聞こえにくくなる。そもそも発言が雑になる。
よく「文末をはっきり言いましょう」と日本語の場合、指導するが、文を言い終わるかどうかの前に次の動作に入っているということで、所作が崩れている。
はじめは「ぼくはりんごが好きです。」とフルセンテンスで言わせる。
文を言い切る練習である。先の起立、着席との関係もある。これを切れることなく、かといってかぶることなく、次々と言えるようになれば授業のテンポもよくなる。
さらに、同じ考えが続くようであれば「ぼくも」「私も」と言わせるようにする。
これも後の発言に生きてくる。「も」の段階で、その子の意見が分かる。
ちなみに、慣れてくるとお題を出してから全員が言い終わるまでに1分程度でできるようになるから、朝の会のおまけのようにときどきやると楽しい。
それも慣れてきたら、次のバージョンとして省略した発言を教える。
「ぼくは」も「好きです。」も省略する。
「好きなものを教えてください。」というお題が全員に周知してあるなら、「ぼくは」という必要はない。自分の好みを言うのに決まっている。同じ理由で「好きです」も不要となる。
すなわち「りんごです。」「みかんです。」と言うようする。単語で終わるのはだめである。必ず「です」を付ける。
これで次々言えると、テンポがよくなる。
ちなみに省略形もフルセンテンスも状況に応じて使い分けるために、教えておくといい。
<授業への転化 列指名>
年度の初めごろには、この方法をよく使う。
列を指定して、前から順々に次々と言わせる。列ごと一斉に立って、前から順に発言し、言い終わったら着席するパターン。同じく前から言わせるが、発言のタイミングで自分で立ち言い終わったら座るパターン。どちらもやってみる。
時には、例外的に座ったままという場合もある。
初期の段階では、同じ答えを言わせるといい。
算数などで答えが分かっている場合、「この列、起立。」「5+3はなんですか。」と問い、列指名で「8です。」と同じと分かっていてもあえて言わせるというような方法である。
同じだと分かっているから、これは声を出す練習だと考えてもらうといい。
全員が言うとくどくなるので、一つの発問で一つの列だけ言わせる。それをさまざまな授業で多用し、違う列を指名していく。
時には、横一列で指名したり、後ろから指名するなどバリエーションを変えてもいい。
次の段階では、「わきお」すなわち「分かったこと、思ったこと、気が付いたこと」を言わせる。
資料を見てノートに書かせた後、自分の意見を言う時に使う。
これも、列指名で次々に言わせる。
「わきお」は、書いている量が子どもによって違う。少ない量の子どもは言うことが亡くなってくる。
そこで、まずはじめは、予め言うことを一つ選ばせて置き、たとえ先に言われたとしても同じことを言っていいというルールにしておく。
これは、考え込んでテンポを崩すことがないようにするためである。
列指名による発表は、子どもたちが発言をするしないの選択肢をもたないという意味で、学級の初期の段階に入れることが重要である。
指名をされたら、発言はするものだという習慣づけになる。
だから、絶対に子どもたちが答えられるような問いを設定する。
先にも述べた「自分の好みを聞く三択」や、ほとんど全員が回答できそうな答えを繰り返し言わせていると分かるような(先の3+5のような)問題などである。
また、これは音読にも使える。音読の練習で一文だけを取り上げて練習するときなどに、列指名で順々に読ませることができる。同じものを読ませるから、聞いている方も何度も同じ文章が耳に入るのが効果的である。
算数の文章題などでも、繰り返し読ませるときに使える。
<ランダムに指名>
列指名になれてくると、次は教師がランダムに指名する方法を取り入れる。
ランダムな指名は、いつ当たるか分からないという緊張感が出てくる。その緊張感が、そのまま授業そのものへの緊張感にもつながる。