学年主任10 仕事の任せ方

学校システム

仕事の任せ方

 学年の仕事で、大きなものに行事がある。
 特に学習発表会や運動会のように、子どもたちに練習をさせて、保護者などに見せるものは、内容や練習の段取りなどするべきことも多い。

 これらをどうやって仕事分担にしていくかも学年主任の采配が生きるところである。
 私は大きな行事の担当は、学年で割り振ることにしていた。

 ここで大切なことがいくつかある。

 一つ目は、大きな仕事の担当は四月に割り振るということである。

 行事の直前になって、任せられる方も準備の時間が足りなくなる。一年間の中で、学年で取り組む必要があるものを全部洗い出し、担当を割り振るのである。

 そうすれば、仕事の偏りもなくなるだろう。

 学年のメンバーの経験年数などで、調整も必要である。大学を出たばかりの初任者に、三か月後の運動会のダンスを任せるというようなことは、無謀以外の何物でもない。

 二つ目は、大きな割り振りは決めたとして、全体の方向性は事前に決めておいた方がいい。いわゆるビジョンの共有である。

 それは学年主任がリードしてもいいだろう。前年度まで何となく元気がなかった子どもたちだと聞いているのであれば、活発な姿が引き出せるような演出を年間を通して考えていくことが必要・・・というようなビジョンは主任でないと難しいだろうと思う。

 三つめは、仕事は割り振っても、その検討のための打ち合わせをいつからどうやって始めるかは、学年主任の設計が絶対に必要ということである。

 大きな行事であれば、三か月前くらいから少しずつ打ち合わせの中で、取り上げていき理念の共有から具体的な指導へと移行していくプロセスを作っていく。

 修学旅行や遠足などは書類の提出が必要だったりする。
 行事によっては、保護者に事前の準備をお願いするものもある。

 そうした場合に、時間がぎりぎりであることは他者に迷惑をかけることになる。打ち合わせの時間管理を責任者がコントロールすることは、組織論としてはごく普通である。

 最後に心得として、学年で仕事を割り振るのだけれど、さまざまな諸事情が起こった場合は、全て主任が背負う覚悟は必要である。

 例えば、運動会のダンスの指導を任せていたのだが、学級がうまくいかないようで心理的にも疲弊している若手がいたとする。
 その時に「自分が代ろうか」と言わなくてはいけない、という覚悟は四月からもっておくべきだ。
 そのために自分の腹案をもち、いつの段階までにその最終手段を取らねばならないかを常に頭の中に入れておかなければならない。

 それがなかったら、仕事が遂行不可能になったときに、困るのは学年主任自身である。
 事故や病気、学級の問題で仕事ができなくなる可能性はいくらでもある。人生は常に順風満帆とは限らない。

 「いざとなったら自分が。」という覚悟は危機管理でもある。

 かつて(その時は自分は学年主任ではなかったが)、学習発表会直前で、合奏の指揮をするはずだった主任が交通事故にあったことがある。
 幸い大きなけがではなかったのだが、指揮はとても無理であった。
 私は急遽一週間くらい前に指導と本番の指揮を交代することになった。一週間前と言っても学年の練習時間は2時間程度、後はリハーサルだけでの交代である。
 それでもやらなければならない。

 仕事とはそんなものである。

 反対に研究授業は、自分がやりたい方だった。学年で一人、校内で公開する担当を決めるときに「自分がやってもいいよ」といつも言っているのだが、大体の場合は後輩も立候補してくる。(笑)
 かくして、譲ることが多かった。それはそれでうれしいことである。

 一番ピンチの状態を想定しつつ、できる限り任せていくという両極端を同時に頭の中に描いていくのも主任の仕事であろうと思う。

学年主任シリーズ 意外に語られてこなかったことに独断と偏見で切り込みます
01 先の見通しが第一の仕事
02 勤務時間は厳守!
03 やってはいけない打ち合わせ
04 チームでの合意形成の方法
05 初任者の教室を1000回見た
06 高段の芸「評価基準」
07 新しいことに挑戦しよう
08 時数計算は決して粗末にしない
09 そろえることより説明責任
10 仕事の任せ方

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