脳の構造は変わっていない

初等教育論

 もしもタイムマシンがあって、縄文人の赤ん坊を現代に連れてきて育てれば、どんな子供に育つか。
 縄文人の子どもだから、その名残を残し、あまり現代社会を理解できないままに成長するのではないかと考えてしまう。

 しかし、おそらくは他の現代の子どもたちと変わらない成長をしていくだろう。
 人間の脳の構造は、数万年前と変わっていないという。(多少の違いについては諸説ある。)
 にもかかわらず、現代社会が縄文社会とこんなにも違うのは、誕生してから見ているものが異なるからである。
 これまでも述べてきた「そういうもの」という受け入れ能力があるからこそ、その環境に適応して生きていけるのである。
 反対に、現代社会の赤ん坊を縄文時代に連れて行ったとしても、縄文人として成長していくだろう。

 人間の脳は基本的な構造が変化していない、という事実を私たちはもっと丁寧に考えていくべきだと思っている。

 確かに現代社会にも適応はしている。しかし、生物学的な特性はずっと前のままである。

 現代の肥満の問題もそこにある。もともと(人間だけでなく)食べ物は常に少なく、いつも空腹の状態で生きてきた。だから、人間の脳は、体全体も含めて、空腹への対応はできている。体に脂肪を蓄えるという仕組みもそこからできている。

 現代社会のように、食べすぎることが体のシステムに組み込まれていない。

 運動することも当然のように脳や体にプログラムとして組み込まれている。長い間歩いたり、時に走ったりすることで、食べ物を探して回るようにできている。

 最近の研究では脳の成長を助けるには、運動が最も効果的であると言われている。
 脳トレのような問題を解くのではなく、運動である。
 それは、人間が食べ物を探すために、歩き走り続けなければならなかったときからの影響であるとのことだ。食べ物を探すという行為は当時の生活では最重要課題であり、歩き、走り続け(つまり運動して)食べ物を探すことに知力を生かさなければならないのは当然のことである。

 こうして考えたときに、子どもたちの発達を促すには、タイムスリップの発想が必要ではないかと考えている。縄文人だったらどう生きるのか、どう成長していくのかを踏まえつつ、それを現代に取り入れていくという発想である。

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