給食費振込問題=コストの問題

現代教育論

【給食費振込問題=コストの問題】

 給食費を、学校いや教師が集めているところがまだかなりあるという記事を見て、正直驚いていた。
 地方によって、仕事の在り方が違うことは頭で分かっていても、こうして事実を見ることの大切さを改めて痛感する。

 そういえば教師になったばかりの頃は、給食費はおろか、教材費と称する少額のお金も、反対に修学旅行の積み立てのお金もいつも教師が集めていた。
 安全かつ正確に集めるためのコツみたいなものもあった。

 今地元では、基本的に子どもがお金を学校に持ってくるということがない。金のやりとりの間に子どもを介在させないだけでも大きなメリットがある。
 もちろん、振り込みになっても口座のお金がないなどの未納の問題も一部にはあるが、それでも全員手集めよりははるかに好ましい。

 さて、この振込問題をドライに考えてみる。
 今や銀行振り込みは、社会的にも認知され、おそらくは誰でもが知っているし、できるものである。

 それを実施しない理由は、ひとえに「振り込みのシステムを構築するだけのお金が行政(教委)の方にない」 ということになるのではないか。
 まさか「毎月の手集めで、子どもに給食の大切さを実感させるため」などとは言わないだろう。(笑)
 百歩譲って、行政にお金がないから振り込みのシステムにならないとしよう。

 では、振り込みにかかるコストは誰がかぶっているのか。言うまでもなく、教師である。
 行政が賄えないコストの負担を教師が代理で行っている。

 では、その教師に振られたコスト分を、行政がお金として払ってくれているのか、といえば払っていない。
 なぜか、教師に残業代を払うというシステムがないからだ。

 つまり(今さら言うまでもないことだが)本来、行政サイドが予算とシステムを構築してやるべきであろうことを、労働者サイドに無償で仕事をさせることで予算を削っている、というシステムだとはいえないか。
 仮に各担任に「給食費支払い補助手当」を毎月支給することにすれば、やがてその金額は振込システムを作る費用を超え、むしろ負担になるだろう。
 ただでやらせている限り、行政にはシステム構築の負担をせずに済んでいる状態なのである。

 そしたら、「では、振り込みシステムになっている地方の教師は、その分給料は減るのか」と文句を言われそうだが、安心してください。すでに超勤はそれ以上に多い。(笑)
 振込業務分だけが超勤ではない。すでに数十時間の超勤をしているのに、そこに振込補助の仕事が減ったとて、他の残業が残っている。

 教師に仕事を回せば、そのコストを給特法の中に埋め込んだ形で実質ゼロにできるから、仕事を押し付けていますという論理が成り立つのだなあと思った次第である。
 今、地方行政も予算的に厳しいところが多いのは百も承知だが、それを教師の側が忖度するべきものでもない。仕事は仕事だからだ。

 子どもの指導ならともかく、金を扱う問題(特に給食は保護者と行政の問題である。)は、指導の業務とは明確に切り離すべきではないのか。

 教育行政は地方自治の原則に則っているから、一律に国家の指示を出せるわけではないことは承知しているが、これは明らかに業務ではないと文科省から出せないのか。
 文科省が、それは教師の業務ではない、と言えば、今度は地方が手集めさせている理由を、保護者と学校現場に説明しなければならなくなる。

「金がないから、代理やってもらってます。」以外のどんな理由があるのかは分からないが。

 イメージだけで言えば、まだ昭和である。
 何でも人間がやっていた時代のままの雑用が膨大に残っていて、そのあまりの雑用の多さに、「ついでに金も集めてね」と放置し続けてきた・・・そんな感じである。

 ちなみにいっそ、給食費は全額国庫負担にしてくれたらと個人的には思っている。
 全額まで行かなくても半額でもいい。地方と折半する。
(学校規模によっては給食が難しいところもあるかもしれないために、一律が難しいのだろうけど。)

 子どもの出生率は年々減少している。
 大学や高校の入学者が減少しているなんてニュースになっているが、日本中で毎年子どもの数が減っているのだから、今さら驚くことでもない。

 今のゼロ歳児の人数が、そのまま5年後の5歳児、18年後の成人年齢とほぼ同じである。
 転居により地方の移動があるとはいえ、日本全国規模であればほぼ分かっている。

 仮に学校給食を国庫が負担するとしても、その費用は単純に年々減っていくのである。(いいことかどうかはともかく)インドのような人口大国でしかも若年層が圧倒的に多い国ならば国庫負担は、かなりの圧迫になろう。

 子どもの数が減っている。
 それは、将来の国家を担う人材の「絶対数」が確実に減少していることを意味する。
 ならば、現象を見越したうえで、今から「投資」できないものか。年々コストが下がると分かっているのだから、今が一番負担が高いのである。

 給食費を国家と地方で案分して全額負担してくれると、学校教育のシステムはけっこう大きく変わる。もちろん、振込問題なんてゼロになる。(笑)
 保護者も金銭面については何も考えなくていい。

 子どもが学校に行ったら、友だちと元気に遊んで、給食をお腹いっぱい食べて、毎日新しいことをちょっとずつ身につけることができる。
 そんなシンプルな原則が保障されてるだけでも、子どもにとっても保護者にとっても教師にとっても、より良いシステムになると思っている。

 今は、技術的にやろうと思えばできるシステムはいくらでも存在する。それをやっていないのはひとえに「金の問題」なのではないだろうか。

 今よりもさらに生まれてくる子どもの数が減り、いよいよ国家存亡の危機みたいになってくると、給食費なんかあっという間に全額負担になりそう。その時はもう遅いかもしれないが。

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