集団に埋もれさせない音読指導

教育技術シリーズ

 音読指導で集団から個別へと段階を経ていくときに、気を付けることがある。
 集団で練習していると、その中に埋もれて努力しない、つまり声を出さない子どもが出てくる。
 これは、音読に限らずどの活動にでもいえる。

 だから段階的に人数を減らしていくことで、次第に緊張感を高めていくステップを取るのだ。
 列ごとに読むということは、他の列の友だちから自分が見られている、という感覚になる。見られていると自覚すると人は緊張感が高まる。

 その緊張感が上達を促すこともあるのだ。だから、段階的に緊張度も上げていけばいい。
 多くの子どもたちは、この方法だけで緊張度をあげながら一人でもできるように、自分の意識を高めることができる。

 しかし、中には集団に埋もれたままの子どももいる。
 そうした子どもたちが多い学級では、「声を出しましょう」という安易な指示では声を出さない。
 出すのは今までもすでに出している子どもたちで、その子たちがさらに声を張り上げるだけである。

 こうして、集団に埋もれた子どもと、張り切りすぎて返って怒鳴るような声を出す子どもに二分化していく。
 張り切りすぎている子どもたちにはセーブさせていい。

「〇〇君、〇〇さん、君たちの声はとてもよく聞こえていてすばらしいです。
 君たちはこれ以上声を出すと怒鳴り声になりますから、無理をしなくていいのですよ。」

と明確にほめ、無制限な努力をさせない。
 代わりに声を出していない子どもたちへ声をかける。

「残念ながら、全体の中に埋もれて声を出していない人たちがいます。全体の場で声を出しておかないと、いつかは一人ずつ読むようにしていくから、その時に困りますよ。」

 これは子どもたちでもわかる。もともと声量が少ない子どもたちが、それなりに努力をしているのは聞いていてわかるし、実際は声が出るにもかかわらず出してないのも分かる。
 何より本人が分かっている。

 全体、部分、個人を適度に織り交ぜながら、子どもたち一人一人が適度な緊張感を維持できるように組み立てていくのが指導である。

音読指導ラインナップ
 00 教室で行う音読指導
 01 声を出させる音読指導
 02 全体から個別への音読指導
 03 個から自立への音読指導
 04 集団に埋もれさせない音読指導
 05 1文から始める音読指導
 06 あらゆる教科でできる音読指導
 07 微細にこだわる音読指導
 08 黙読へ向かう音読指導
 09 詰めにこだわる音読指導
 10 進化した音読
 11 暗唱と連動した音読指導
 12 他教科へ波及する音読
 13 裏技の音読指導
 おまけ 音読の宿題は保護者に恨まれる

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