黙読へ向かう音読指導

教育技術シリーズ

 音読は朗読とは違う。

 朗読とは、人に聞かせるための読み方である。間を考え、一語一語感情豊かに表現し、聞いている人に場面を思い起こさせるのが目的である。

 だから、朗読は読んでいる本人が内容を理解していることが前提となる。
 ちなみに初めて読む文章を朗読するのは、極めて難しい。先が予想つかないから、こんな状況だろうと予想して気持ちを込めて読んだら、真反対の状況だったということもある。
 また、朗読をやっているときは、実は読んでいる自分自身は意味をとらえにくくなる。読んでいる部分部分の表現に意識が行き、全体をとらえにくくなる。やってみると分かる。

 これに対して、音読とは自分が理解するために読む。
 学校で行う指導も朗読指導ではなく、音読指導である。
 音読の最も大切な要点はすらすら読むことである。よどみなく、途切れなく読む。スピードはできる限り速い方がいい。

 全体で読むときには句読点を意識し、速さも調整が必要だが、それでも練習を重ねるごとに速く読めるように追い込んでいく。
 個人で読むならば、速ければ速い方がいい。慣れてくれば句読点すら無視してもいい。

 それは、音読がやがて黙読ができるようになるための布石として位置づいているからだ。
 初めは声を出すことが目的であったが、音読の最終形態は黙読である。
 黙読をしているときには、句読点で文章を切っているような自覚はないだろう。

 幼児期の段階の子どもたちは、声に出して文字を読む。自然に声に出てしまう。自分で出した声を自分の耳で確かめるような状態だ。
 しかし、やがて声を出さなくなる。
 発語の速さが、脳の理解の速度に追いつかなくなる。声に出していると脳の理解に追いつかなくなる。やがて言語が内言化していく。

 やがて黙読ができるようになると、音読指導の役割は少しずつ減ってくるのだが、ここで忘れてはいけない点がある。
 音読で間違える子どもたちは、黙読でも間違えているというこである。

 これまでも指摘していたように、助詞の読み間違い、分からない熟語の読み飛ばし、文末のあいまいさなどは、黙読している状態でも同じである。そして、黙読するようになってから、その誤読を指摘するのはとても難しい。

 だからこそ、音読でていねいな指導が必要となるのである。
 子どもたちが声に出して読んでいる段階でこそ、正確に読ませる指導が必要なのである。

音読指導ラインナップ
 00 教室で行う音読指導
 01 声を出させる音読指導
 02 全体から個別への音読指導
 03 個から自立への音読指導
 04 集団に埋もれさせない音読指導
 05 1文から始める音読指導
 06 あらゆる教科でできる音読指導
 07 微細にこだわる音読指導
 08 黙読へ向かう音読指導
 09 詰めにこだわる音読指導
 10 進化した音読
 11 暗唱と連動した音読指導
 12 他教科へ波及する音読
 13 裏技の音読指導
 おまけ 音読の宿題は保護者に恨まれる

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