水泳指導4 子どもたちのエピソード

体育授業のコツ

 ある年の子どもの話。その年は、赴任していきなり6年生。昨年まで荒れている子どもも多かったという落ち着かない学年。
 水泳学習を始めてびっくりしたのは見学の多いことだった。学年全体で何十人もいた。

 それでも先にも述べたようにグループ編成をして、練習していくうちに、次々に25mをクリアする子どもが出てきた。
 見学している子どもたちには(自分の学級だけではない)、特に叱るわけでもなく「見学なの?残念だったねえ」というだけ。

 そのうちに不思議なことに、見学の数が次第に減ってきた。
 回を重ねるごとに水着の子どもが増えてくるのである。そして、みな練習して次々に泳げるようになっていった。

 自分の学級にアトピーがひどくて、プールには入れないと毎回見学していた子どもが一人いた。その子も最終日にはなんと保護者の認め印をもらい、着替えていたのである。

 びっくりしたが、何も言わずにいた。そして、練習してしっかり泳げるようになった。

 次はまた別の子の話。
 その年も飛び込みの6年担任だったが、同じように5月ごろに「およげるようにしてあげるからがんばろう」と話していた。
 しかし、どうやらその女の子は、半信半疑だったらしい。5年生までほとんど泳げなかったから、もうあきらめの境地だったのだろう。

 しかし、その子も泳げるようになった。ゴールにたどり着いた瞬間に、おめでとうと声をかけたが、取り立てて喜んでいるようにも見えなかった。

 それが帰宅後、仕事で家にいなかった母親にわざわざ電話して、泳げたことを報告したそうだ。それほどにうれしかったそうだ。

 卒業後に、私が書いた学級通信の最終号を、わざわざ額に入れて自分の部屋の扉に飾っていたらしい、・・・とこの一連の話はずいぶん後から保護者に聞いた。

 もちろん、他にも泳げた時に飛び上がるほどに喜んだとか、友だちに拍手をしてもらっていたとか、泳げたその日一日ずっとにこにこしている姿でいたとか、素敵なエピソードはほかにも山のようにある。

 25m泳げなくても、生活には困らない。
 しかし、こうして泳げるようになったことで、変わっていく子どもたちの姿を見ることが何よりも好きなのである。

全員25m完泳を目指す水泳指導ラインナップ

水泳指導 準備シリーズ 学年全員の指導をターゲットにします
 01 泳げることの向こう
 02 指導は5月に始まる
 03 指導の全体像
 04 子どもたちのエピソード
 05 指導の系統

水泳指導 浮きの指導シリーズ 苦手な子どもたちはここからていねいに指導します
 06 顔を水につける
 07 もぐる
 08 浮く指導
 09 浮く指導の小さなステップ
 10 ふし浮き
 11 けのび
 12 けのび微細な指導

水泳指導 息つぎの指導シリーズ 25m完泳しない大半の理由はここにあります
 13 息つぎ
 14 ボビング
 15 連続したボビング
 16 浮きと呼吸の連動
 17 浮きと息つぎの発展

水泳指導 ストロークとキックの指導シリーズ 協応動作という考えを水泳にも取り入れます
 18 キックとストローク
 19 ストロークどこを見るか
 20 腕に水の抵抗を感じるか
 21 キックの練習
 22 キックとストロークの連動
 23 ブレスをいれた泳ぎ 
 24 クロールのブレス

水泳指導 目標の25mへの指導シリーズ いよいよゴールへ向けて詰めの指導です
 25 完泳への力を蓄える
 26 目標25mへ
 27 完泳までの道のり
 28 酸素摂取能力

水泳指導 まとめシリーズ 学校全体で指導ができると負担軽減・効果倍増なのです
 29 保護者への話
 30 全校での指導
 31 全校での指導系統案

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