水泳指導28酸素摂取能力

体育授業のコツ

 酸素摂取能力と呼ばれるものがある(らしい)。
 同じ呼吸でも酸素を取り込む力に差があるということだ。もちろん、この能力が高ければ高いほど、少ない呼吸で楽に動くことができる。

 水泳の時に、苦手な子どもたちは緊張する。肩で息をし、呼吸も浅い。

 人間は水の中にいるだけである種の危険を想定し、緊張状態になるらしい。
 そして、この状態では酸素摂取能力が落ちるらしい。

 つまり、水の中にいるだけで(潜っているわけでもないのに)息苦しくなる。明確に自覚することはなくても、そういう状態になるという。

 克服するには、慣れるしかない。特別な運動や薬があるわけでもない。

 慣れるために、水中で(顔は出しておいてもいいから)目いっぱい運動させる。
 例えば、水の中を走るだけでもいい。数メートルしか泳げないなら、何回立ってもいいから、25mを泳がせてもいい。犬かきや背泳ぎのような泳ぎ方でもいい。

 水の中の活動を繰り返して、息が上がるくらいの体験をしていくと、次第に呼吸も楽になっていく。
 エビデンスがあるわけではないのだが、これまで指導してきたときには、子どもたちがなるべく水の中でたくさんの活動ができるように仕組んできた。
 かなりの運動量であることは、同学年の感想から分かる。今までこんなに活動させていなかったと、過去何人もの同学年に言われた。

 息が上がるくらいの運動量というのは、体育の学習全般にわたる大原則である。
 上手になることも大切なのだが、週に3回程度、息が上がるくらいの運動をやっていくというのは成長の上で重要な要件であり、水泳もその中の一つなのだ。

 「浮きの怖さ」は床から足が離れる怖さであると、前に述べた。

 慣れない感覚には誰もが初めに恐怖を覚える。これを楽しいと言えるようになるまでの慣れの時間は体育の学習において重要である。

 特に小学校の場合は、筋力や心肺機能の問題ではなく、この感覚による影響がとても大きい。
 反対に言えば、感覚を磨き、心地よさを実感できるようになると体育が好きになる。難しい技にも挑戦しようとする。

 鉄棒の逆上がりは筋力の問題であるように見えるが、実は逆さ感覚がないとできない。
 しかも後ろから倒れこむようにして逆さになるのである。この逆さ感覚に慣れ、心地よいと思わなければ、どれだけ筋力を鍛えても、できるようにはならない。子どもの足が上がらないのは感覚の問題なのである。

 水泳にも同じような原理がある。
 授業の中で、その原理を織り込んでいけば、活動は楽しくなるし、運動量も増え、結果的に子どもたちは上達し、満足感も得られる。

全員25m完泳を目指す水泳指導ラインナップ

水泳指導 準備シリーズ 学年全員の指導をターゲットにします
 01 泳げることの向こう
 02 指導は5月に始まる
 03 指導の全体像
 04 子どもたちのエピソード
 05 指導の系統

水泳指導 浮きの指導シリーズ 苦手な子どもたちはここからていねいに指導します
 06 顔を水につける
 07 もぐる
 08 浮く指導
 09 浮く指導の小さなステップ
 10 ふし浮き
 11 けのび
 12 けのび微細な指導

水泳指導 息つぎの指導シリーズ 25m完泳しない大半の理由はここにあります
 13 息つぎ
 14 ボビング
 15 連続したボビング
 16 浮きと呼吸の連動
 17 浮きと息つぎの発展

水泳指導 ストロークとキックの指導シリーズ 協応動作という考えを水泳にも取り入れます
 18 キックとストローク
 19 ストロークどこを見るか
 20 腕に水の抵抗を感じるか
 21 キックの練習
 22 キックとストロークの連動
 23 ブレスをいれた泳ぎ 
 24 クロールのブレス

水泳指導 目標の25mへの指導シリーズ いよいよゴールへ向けて詰めの指導です
 25 完泳への力を蓄える
 26 目標25mへ
 27 完泳までの道のり
 28 酸素摂取能力

水泳指導 まとめシリーズ 学校全体で指導ができると負担軽減・効果倍増なのです
 29 保護者への話
 30 全校での指導
 31 全校での指導系統案

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