水泳指導11 けのび

 けのびは水の流れを体感する。動きが生じる。その分だけ、臥浮きよりも子どもたちにとって難しくなる。

 けのびが美しいフォームでできるようになることが、このステップの目標である。

 フォームが美しいと、手足を動かさないのに、壁や水底を蹴るだけで5mも6mも進むことができるようになる。

 事実、スイミングスクールで練習している子どもたちは、けのびを見ればすぐに分かる。

1 顔を上げない

 けのびを始めると、顔が上がるようになる。

 顔を上げたままけのびをすると、顔面に水があたり、それがブレーキとなる。また、人間の体は顔を上げると、下半身が沈むようにできているので、次第に体が沈んでくる。

 浮いている間は、顔を上げない。子どもたちには「自分のおへそを見ていなさい」と指示をする。進んだ距離が気になる子どもには、水底のラインを見なさいと合わせて指示をする。

 それでも、自然に顔が上がる。
 そばについて、頭をつんつんとつついて、「出ているよ~」と声をかける。しばらくはその状態が続く。
 これも回を重ねるごとに上手になっていくので、何度も練習をさせ、時折教師がチェックをすればいい。

2 手足が広がる

 進んでいくうちに、なぜか手足が広がり臥浮きの初期のころのようになる子どもが、時々いる。これも指摘すればすぐによくなる。ただし、気を付けるせいで体に力がはいることがあるので、臥浮きの時と同じように脱力を意識させる。

 この2点は、臥浮きの時にはできていたことが、またできなくなったように思ってしまう。

 しかし、先にも述べたように「動き」が生じることによる戸惑いがあるだけなので、何度か練習するうちに、感覚を取り戻すようになる。

 人が何かを身につけていくときに、新しいステップに入ると、前までできていたこともできなくなることがある。これは、意識するべきことが増えた結果、前のことに意識が行かない状態になるからである。

 つまり、まだ意識しなければできないのだ。新しい課題を加えながら練習していくことで次第に、簡単な課題から「無意識化」が始まる。

全員25m完泳を目指す水泳指導ラインナップ

水泳指導 準備シリーズ 学年全員の指導をターゲットにします
 01 泳げることの向こう
 02 指導は5月に始まる
 03 指導の全体像
 04 子どもたちのエピソード
 05 指導の系統

水泳指導 浮きの指導シリーズ 苦手な子どもたちはここからていねいに指導します
 06 顔を水につける
 07 もぐる
 08 浮く指導
 09 浮く指導の小さなステップ
 10 ふし浮き
 11 けのび
 12 けのび微細な指導

水泳指導 息つぎの指導シリーズ 25m完泳しない大半の理由はここにあります
 13 息つぎ
 14 ボビング
 15 連続したボビング
 16 浮きと呼吸の連動
 17 浮きと息つぎの発展

水泳指導 ストロークとキックの指導シリーズ 協応動作という考えを水泳にも取り入れます
 18 キックとストローク
 19 ストロークどこを見るか
 20 腕に水の抵抗を感じるか
 21 キックの練習
 22 キックとストロークの連動
 23 ブレスをいれた泳ぎ 
 24 クロールのブレス

水泳指導 目標の25mへの指導シリーズ いよいよゴールへ向けて詰めの指導です
 25 完泳への力を蓄える
 26 目標25mへ
 27 完泳までの道のり
 28 酸素摂取能力

水泳指導 まとめシリーズ 学校全体で指導ができると負担軽減・効果倍増なのです
 29 保護者への話
 30 全校での指導
 31 全校での指導系統案

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